一般的な調査は、国税通則法(第 34 条の 6 第 3 項)の規定に従って、「国税局資料調査課」や「国税 局調査部」、「管轄税務署の調査官」により納税者の同意の下で行われる調査をいう。 これを「任意調査」と呼び、「国税局査察部(調査査察部)」が、脱税の疑われる納税者に対して、裁判 所の令状を得て強制的に行う「強制調査」と役割を異にしている。 国税通則法に定める通り、担当職員は税金に関する質問を納税者に行える「質問検査権」を有してい るため、納税者はこの質問を黙秘したり、虚偽の陳述をすることは、基本的にできない。
一年間に実地調査を実施している割合を、「実調率(実地調査率)」と呼んでいる。 国税庁が公表した最近の資料では、…国税職員数は減少傾向にある一方、申告件数は増加傾向に あることなどから、実調率は長期低下傾向にある。
平成 25 年度は法人が 3.0%、個人が 1.0%。
ということは…統計的に言えば、「法人は 33 年に一度、個人については 100 年に一度」しか調査に来 ないという実態になる。
国税職員数については、平成 9 年度の 5 万 7,202 人をピークに、定員削減方針を受けて減少傾向が 続いており、平成 27 年度の定員は 5 万 5,725 人となっている。
一方で、申告件数は長期的に増加傾向となっており、平成元年の2,111万件と比べると、平成25年は 1.3 倍の 2,731 万件という水準になっている。
このように職員数の減少傾向が続くなか、申告件数は増えている状況にあり、税務調査の複雑困難 化・国際化、悪質な滞納事案への対応などが実調率の低下につながっているとしている。
こうした状況の中で税務当局は、今後の調査・徴収に関して、「重点化」をキーワードに、課税上問題 が発生しやすいとみられる事案に対する調査、あるいは納付意志を全く示さない悪質な滞納の整理 といったものに重点的に取り組み、大きな波及・牽制効果をもたらしたいとの意向があるようだ。
一方で、課税上の問題が少なく、適正な申告が期待できる納税者には、ICT を活用した情報提供の 充実や、電子申告、電子納税といった利便性の高いツールを提供し、自発的に適正な申告納税を行 ってもらう環境の整備を進めたい考えのようである。
その具体例として、資本金 40 億円以上の大企業を対象に、税務調査の際、税務に関するコーポレー トガバナンスの状況を確認し、極めて良好であると認められた法人については、企業の自主的な対応 に一定程度任せて、調査の間隔を延長するというスキームを平成 24 年 7 月から実施している。
納税者側から見れば、納税道義の高揚に努め、租税の期限内完納を推進することが、結果的に、税 務行政の効率の良い執行を実現させる「近道」となるに違いない。
「納税」は憲法に規定された、たった3つしかない、国民の義務である。
憲法遵守の姿勢は、むやみやたらに「権利のみ」を主張するのでなく、「義務」を適切に履行すること から始まること、忘れてはならない。