違和感あり! 「おもてなし」でいくら儲けるか??(会長コラムより)

 最近特に、安保関連法案や新国立競技場の問題で常に話題の中心にいる安倍首相、とてつもなく忙しい人である。その安倍首相が今から少し前、ほとんどのマスコミは、さほど大きな扱いをしなかったが、新たな問題提起を投げかけた。

 

 世界中を圧巻した「お・も・て・な・し」のアピールは、五輪誘致の大きな原動力となった。その「おもてなし」について安倍首相はある会合で、「ホテルでもレストランでも、誰に対してもきめ細かな配慮がなされ、『おもてなし』の精神が行き届いているが、産業としてサービスを眺めた場合、単に『質がよい』というだけでは足りない。質の高いサービスには、それにふさわしい評価がなされ、対価を得られなければ、その事業は持続しない」と語った。

 その論拠は、経済協力開発機構(OECD)の統計である。

主要7カ国(G7)の時間当たり国内総生産(GDP)を比較したところ、日本はG7の枠組みができた1986年以降、最下位を脱したことがない。

政府は日本の雇用とGDPの約7割を占めるサービス産業の生産性向上が鍵を握るとみる。

 

 早速6月には官邸で「サービス業の生産性向上協議会」の初会合を開催。その場で安倍首相は「わが国の雇用の7割を担うサービス業は飛躍的に生産性を高める潜在力を秘めている。今こそ『サービス生産性革命』を起こす時だ」と呼び掛けた。

 日本生産性本部の木内康裕主幹研究員は、「日本はサービスの要求水準が高いが、それが付加価値につながっていない。おもてなしにお金を払うことになっていない」とするが、「おもてなし」を稼げるサービス業に特化していくとすれば、頗(すこぶ)る、違和感を感じざるを得ない。

 欧米流のサービスは、提供側と顧客が対等であり、支払われた対価に沿って提供される労働に過ぎず、商取引に過ぎない。安ければ安いなりのサービスであり、高ければ素晴らしいサービスを受けることが可能だ。 

 

 しかし、日本の場合は、サービス提供側と顧客の立場は取引関係にはなく従属関係にある。サービス提供者は、対価以上の労働を提供するのが当たり前だと思い込んでおり、また顧客側も、支払った以上のサービスを要求するのが当たり前となっている。サービス提供側は、対価以上のサービスを提供しなければという脅迫概念にとらわれているので、実は顧客は期待していない様なサービスも提供しており、「おもてなし」は「お客が求めていることを、求められる前に提供すること」と定義している。 

 結果何が発生しているかというと、壮大なる無駄であり、生産性の低下の原因となっているのである。 

 でも、それを含めて「おもてなし」であるはず、アピールして集客して稼ぐという考えがすでに「おもてなし」とは違う視点かも知れない。チップをもらわない、日本固有の「おもてなし」だからこそ、世界でも評価が高い、つまりは、「おもてなし」に無駄があるからこそ、日本の「おもてなし」だと信じていた。

 

 プロが選ぶナンバーワンの老舗旅館「加賀屋」(和倉温泉)オーナーの小田禎彦氏は、その秘訣について、…「テーブルでの料理セットと畳で中腰になるセットでは効率では比較にならない。効率悪い、でもその無駄とか効率の悪さ、面倒臭さというものを.丁寧にもう一遍やっていくことが大資本には出来ない、中小企業が生き残る条件」… だと語っている。