「こころ」を伝える(会長コラムより)

人と人の「こころ」が触れ合うこと、これがコミュニケーションの最たるものであろう。

 

理解し合い、分かち合い、絆が結ばれ信頼が持てる。感動を体験し、感謝が生まれる。

仕事も恋愛も、お付き合いも家庭の生活も、全てが人間のなせる業(わざ)、この「こころ」の通い合いがあってこそ、円滑な意思疎通ができるのだ。

と…、言葉を並べるのは実に容易であるが、現実はそう、簡単ではないようだ。

 

なぜか?

 

その一つの原因は「こころ」は、見えないからだと思っている。

自分でも、他人でも「こころ」や「思い」は見えないのである。

見えないから伝わらない、見えないから誤解され、見えないから理解できない。

「こころ」や「思い」を見えるようにする、どうもこれこそが、コミュニケーションを円滑にし、安心と信頼を醸成する秘訣のようである。

 

「こころ」は見えないが、その「こころ」を行動に移す。

その「こころ」をそのまま素直な行為に表わすとすれば、

それは「こころ遣(づか)い」となり、目に見えてくる。

相手を労わる気持ちを持つことは大切だが、それを相手に伝えることで初めて、触れ合いが生まれる。それには、具体的行為がなければ難しいのかもしれない。

同様に、胸の内の「思い」は誰も見えない。

でもその「思い」を行動に移せば「思い遣(や)り」になるだろう。

優しい「思い遣り」があたたかい行為となれば、恐らくほとんど、相手に伝わるものである。

 

「こころ」を行動に…、加賀屋 (和倉温泉)の有名な、感動エピソードである。

「結婚式に招待された男性のテーブルに、女性の写真が置かれていることに客室係が気づいた。聞けば昨年に亡くなられた奥様の写真で、花嫁の姿を一目見せてやりたかったという。

そこで彼女は、花瓶に一輪の花を用意し、料理を2品ほど持ってくると、

『奥様とどうぞご一緒に、今日の花嫁さんをお祝いしてあげてください』 …」

 

さすが!文具の伊東屋 (東京・銀座)

日本でも有名な超高級文具専門店。1,500円の万年筆とカートリッジインクを買った。

そこで若い店員さん、「万年筆についているインクは、このカートリッジと違う色です。

カートリッジと同じ色にお取り替えしましょうか?」と。

何万円もする高級万年筆ならまだしも、わずか1,500円の万年筆。

ちょっとした気配りをさりげなく当たり前のようにする店員さん。 なかなかできることではない。

 

あなたの、優しい「こころ」や「思い」が見えた時、相手の「こころ」に感動が生まれる…そう、

感動を創造し、感動を提供することが、ホスピタリティ産業の原点であった。