納税スイッチ、ON

 ある日、父と母が「納税」の話をしていた。きっと面倒な話なのだろうという私の想像とは裏腹に、二人は楽しそうに会話を弾ませている。すると、いきなり「都道府県の中で、何県が好き?」と質問された。私と兄達は、理由もわからぬまま思い思いに県名をあげた。そして、今度は色々な都道府県、市区町村の特産品がランキング形式で表示されているホームページを見せられた。そこには、食べ物だけでなく、熱気球体験やシュノーケリング体験など様々な内容があり、見ているだけでワクワクするものばかりであった。二人が話していた「納税」とは、「ふるさと納税」という二〇〇八年に始まった制度についてだったのである。どのように使われ、どのように役立っているのか、不透明な部分が多いと言われる一般的な税金とは違い、名前もソフトで親しみやすく、使い道を寄付する際に選択できる、「ふるさと納税」に魅力を感じた。

 「ふるさと納税」とは、自分が応援したい市町村の自治体に「寄付」をする制度で、「思う気持ちをカタチにする」をテーマに、「ふるさと」の大切さを再認識できる貴重な機会だと唄っている。先日も新聞に「ふるさと納税拡充を図る」という記事があり、「ローカル・アベノミクス」という地方対策の目玉となっているようだ。この人気に火がついたのは、各自治体がPRのために、寄付した人に特産品などをプレゼントするようになったためと言われ、寄付を受けた自治体は、収入増となるうえに自治体や特産品のPRも行えてお得だという。さらに、プレゼント用のパッケージを作るために、労働者が必要となり、地方の雇用対策にも繋がってくるらしい。

 我が家では、家族会議の結果「ふるさと納税」を試してみることになり、市区町村選択に入った。ホームページを開き、都道府県から調べると、余りの市区町村の多さに驚いた。そして、特産品がない自治体もあり、サービスの違いがあることを知った。正直なところ、特産品に目を奪われ、納税というよりも買い物をしている気分になる。この時、私の中の納税に対する何かが変わった。

 私達は今、国民三大義務である「教育」を受けている。私は「勉強がしたい」と思って学校に通っているのだが、同じ義務の「納税」に関し、納税者はどういう思いで税金を納めているのだろう。全ての税金に対して「納税したい」と思うことは無理だとしても、一つでも自ら進んで納税することが最も大切なことだと思う。「ふるさと納税」は十四歳の私に「納税したい」と思わせた。納税スイッチをONにしてくれたのだ。税金に対する意識を変えるという意味で、「ふるさと納税」は画期的な政策なのかもしれない。そして、この納税スイッチが、今後、日本の起爆剤となるであろう。