ワンコインで守る埼玉の緑

 僕の住む町は、自然が豊富だ。そう、僕は埼玉県で面積が一番大きい市である秩父市に住んでいる。しかも秩父市の八十七%は森林で、その面積は、埼玉県の森林の約四十%を占めているというから驚きである。さらに、その恵まれた地形と水源を生かして作られたダムも四つある。

 ここには、人々が決して失ってはならない輝く緑と、命の源である大切な水がある。

 しかし、そんな町にも問題がある。住民の高齢化と過疎化である。山を守ってきた人々は高齢となり、そしてその山を守る仕事につく若い世代の人が減少している。そのため、手入れが行き届かず、荒廃した山、鹿に荒らされ緑が消滅した山肌を目にするようになった。

 そんなある日、僕は一つの山が整備され、杉の木の代わりに、きれいな花を咲かせる木が植えられているのに気付いた。そこには「彩の国みどりの基金によって整備されました」と書いてある。疑問に思い調べてみると、埼玉県では、自動車税の一部を財源として、緑を守るために、また緑の再生を図るために使っているという。新しく環境税という制度も導入している他県もあるが、埼玉県では、今ある税制と、寄付という形の両輪で費用を捻出しているのだ。二酸化炭素を吸収してくれる緑に感謝を込めて、その負担額、自動車一台五百円程度。ワンコインである。

 この制度を活用して、鹿による食害を受けていた山は整備され、緑が戻ってきている。ダムの上流でも、森林が整備され、水源かん養林としての機能が守られている。秩父だけではない。森林の少ない地域には、新しく森林を造るなど、埼玉県の各地で、緑の再生が行われているという。

 自然という大きなもの、そして命の水。それは、僕達の生活になくてはならないものであり、何より、個人の力では到底、守りきれるものではない。しかし、自動車を持つ一人一人が、少しずつ協力しあえば、それらは守ることができる。そう僕は思った。

 今朝も目覚めれば武甲山にあいさつをし、緑の山々のトンネルを抜け、僕は学校に行く、かばんには、おいしい水道水が入った水筒を持って。