税が残してくれた爪跡

 2016年 4月14日

「誕生日おめでとう。」

 ケーキに刺さったろうそくが灯す炎を僕は息を吹いて消した。これから食べるおいしそうなケーキを切り分けている時だった。

「ドッ、ガタゴト。」

家が少し揺れた。小さな地震が起きたんだろう。すると、一斉に家中の携帯電話に緊急地震速報の通知が入った。震源は熊本の方だ。テレビをつけると、熊本県周辺地域で起きた、震度五や六の地震情報が画面の上の方で次々に表示された。これは熊本大震災と呼ばれ、地震の後、ニュースで大きく報道されることになった。

 五年前のあの日、まだ僕が小学一年生の頃。学校から下校しようと正門から出た時の事だった。視界がゆがみ、景色が逆さになり倒れこんだ。2011年3月11日の東日本大震災。この時のニュースも今回の地震のニュースも共通して、自衛隊による捜索活動や炊き出し、仮設住宅の建設などの光景がよく見られた。しかし、復旧・復興に多くの費用がかかっている。費用について調べてみると、国民によって集められた税金で成り立っていることが分かる。僕達から集めた税金で助かる命がある。だが、自分達のために使われている訳ではない。でも、それは決して嫌ではない。僕達の住む町もいつ、災害に見舞われてもおかしくない。その時でも、助けてくれるのは、やはり税金だ。このように、自分達の為にお金を貯金していると考えれば、税に対する意識が良い方向に変わっていくと思う。そして、一番大切なのは、国民が国民の為に税金を払い、支え合うことだった。被害者の思いを僕はまだ経験していないけど、いつかそんな日が来たら、本当に税に感謝しなければならない。いや、そんな日が来なくても、僕は税に感謝しなければならない。

 目を閉じて考えれば、自分の周りにある物は税金で支払われている物ばかりだ。ところで、小中学生はこんな文を見たことがあるはずだ。

「この教科書は、これからの日本を担う、皆さんへの期待をこめ、税金によって無償で支給されています。大切に使いましょう。」これは、どの出版社の教科書にも書かれている。僕達は勉強をするために約百万円かかる費用を税金で負担してもらっている。この一文は、今、税を納めることのできない、僕達中学生にとって、納税して頂いている人達へ、学力をつけるために勉学へはげみ、有意義な学校生活を送ることで感謝の気持ちを見せられると思う。

 僕が生まれて、十三年。生まれてから起こった、この二つの震災が僕の心に税という爪跡を残してくれた。そして、この税のおかげで将来に向かう今の自分がここにいる。税の有難みを忘れず、中学生として、やるべきことをやりとげることが今の僕が伝える感謝の第一歩だろう。