社会の歯車となる納税

 今年の三月から、母が働きだしました。私の出産を機に退職していたそうなので、実に十四年ぶりの仕事です。母は、朝五時に起きて家事をこなし、毎日クタクタになるまで働いています。そんな母の初めての給料日、とても嬉しそうに帰ってきました。給料がもらえて、嬉しいのかな、と私は思いましたが、

「お母さんも、所得税を徴収されちゃったんだよ。なんか嬉しい。」

と言ったので、とても驚きました。いつもの母なら、スーパーの特売日や値引きシール、ガソリンの価格、電気、水道料金に敏感なのに、給料の手取り金額が減っても、嬉しそうにしていたからです。思わず、

「なんで税金を徴収されているのに、嬉しいの。意外だな。」

と母に言ってしまいました。すると、

「税金を払うってことは、社会の歯車になった感じがして嬉しいんだよ。しばらく専業主婦だったから、そう感じられたのかもしれないね。」

と言ったのです。「納税は社会の歯車」。働いて納税をすることは、ググッと社会へと押し出すような、めぐらすような社会貢献なんだと改めて考えさせられました。

 近年の日本は、少子高齢化社会が際立ってきています。みんなが安定した生活を送るのには、年金・医療・介護などの社会保障が大切です。平成二十五年度一般会計歳出によると、社会保障関係費が歳出の約三割を占めています。また、総務省「国勢調査」(1970年度、2010年度)によると、1970年度の高齢化率は7.1パーセントだったのに、2010年度には23.0パーセントと三倍以上にも増えています。働き手がどんどん減る一方、老人が増え、社会保障がふくらむことが予測されています。「私たちの暮らしと税金平成28年度版」では、2010年度の働き手が、2.6人で老人一人を支えるのに対し、私が社会人としてバリバリ働いているであろう2050年度には、1.2人で一人を支える社会になってしまいます。このように、社会保障を受けながら、その費用をどう負担していくのか、これからの働き手である私たちに問われています。

 私は将来、看護師として働き、自立した社会人として納税していきたいと思っています。また、仕事をいったん離れた人が社会復帰しやすくなるような環境が整っていれば、母がそうであるように納税者が増え、財源の確保ができると思います。一人の納税額がたとえ少額であっても、より多くの人が社会復帰すれば、多くの人の力で多額の納税額となります。一人一人が歯車となって、社会貢献できれば、安心した生活が送れると思います。今は税の恩恵を受けることが多いけれど私も、「所得税を徴収されちゃった。」と言えるような社会人になりたいです。