期待に応えるために

 いつもと変わらない日常の中で、ふと見た教室の机・・・。そこには、鉛筆で書かれた落書きと深く彫られた文字があった。今までの私なら、見逃して、しょうがないものと思っていたであろうことに、胸がチクチクと痛んだ。やるせない気持ちがこみあげてきたのは私が少しずつ税について考えを深めていたからかもしれない。

 昨年、税の作文を書くにあたり、国や自治体でどのように税金が使われているのかを教わった。私達の生活に欠かせない医療・警察・消防・ゴミ処理に」いたるまで全てが税によって賄われていた。また、教育において、中学生一人につき年間約百万円も負担していることを知った。それには、おそらく教科書の配布や設備投資も含まれるのだろう。私たちの住む行田市では、小中学校の教室にエアコンが設置された。暑さに耐え、熱中症を予防しながら受ける今までの授業を思うと、涼しい環境の中での授業は、とても快適で、格段に私たちに活力を与えてくれた。また、市内中学校のトイレの老朽化に伴い、改装工事が行われた。従来のトイレを知っているだけに、見ちがえるようにきれいになったトイレを使える喜びは計り知れない程であった。

 なぜ、このように子ども一人一人に義務教育の期間が与えられて、手厚く保障されているのか。いろいろ思いをめぐらせながら、教科書をめくっているときだった。

「この教科書は、これからの日本を担う皆さんへ期待をこめ、税金によって無償で支給されています。大切につかいましょう。」

 やっと、私の中ですっと腑に落ちた。そうだ。なぜ、このような恵まれた環境の中で学ぶことができるのか。それは、先代の方々が抱いたこれからの日本を担う子供たちへの『期待』だったのだ。その期待は、後世へと代々受け継がれている思いであったのだ。身体が成長する大切なこの時期に、誰もが適切な教育を受けることができる。色々な立場の方に出会い、幅広い考えを持ち、じっくりと先を見据え判断する力。困難をみんなで協力し乗り切る力。そういった生きていく力を身に付け、育むこと。これからの私たちにそのような力を「期待」しているのではないか。

 その期待に応えるために、今の私ができることは何だろうか。それは、毎日の勉強や運動を頑張るだけでなく、今を懸命に、真剣に学び、生きること。学べることは、当然ではなく尊いことであり、感謝の気持ちを忘れずにいること。税金を支払える大人になるまでに、これからの社会に何が必要なのか、常に関心を持つこと。こういったことではないだろうか。

 先人たちの残したこの軌跡と思いを受け継ぎ、少しでも期待に応えられるよう、よりよい社会を目指す一員となっていきたい。

 教室の机の落書きをそっと消して、これからの私の決意としたい。