恩返しは納税で

 幼少の頃よりよく訪れていた気仙沼。東日本大震災直後の夏も私は気仙沼を訪れた。

 私がそこで見た光景は今でも忘れられない。家は津波で流され崩れ落ち、土台だけが残っていた。あちこちに転倒した車があり、道端にはがれきの山の壁が続いていた。津波によって破壊され、変わり果てた街の姿に愕然としたのを今でも覚えている。

 あれから約六年半。私は毎年家族で気仙沼に行くと訪れる店がある。その店は、津波で流されてしまい、その後復興商店街だった「南紫町商店街」の一角にお店を構え、今年四月に本店をようやく建て直すことができた。そして、そこにはたくさんの支援があったそうだ。しかし、そのたくさんの支援は「全て税金から」だと言う。そこで「税金」に興味がわき、調べてみた。

 被災地の復興のために使うことを目的とした税金で「復興特別税」がある。これは、仮設住宅の建設、がれきなどの処理や学校の復旧に使われるそうだ。中でも「復興特別所得税」は平成二十五年から平成四十九年までの二十五年間に渡って納める税金である。「税金」という支援は持続性のある確かな財源であり、復興のために必要不可欠なものであると思う。

 気仙沼で私はなかなか進まない街の様子を不思議に思い、尋ねた時社長さんが「被害が大きかったので、復興には時間がかかるのは当然。津波のない神戸でも十年はかかっているから、気仙沼の復興はこれから十年、十五年かかるかもしれないが仕方ない事なのだ。」と話してくれた。

 一度壊れた街全体が元の姿に戻るまでは長い年月を要する事、そしてそれを支え続けるのが「税金」だという事を教えられたように思う。

 今、気仙沼は復興に向け動き始めている。被災地が復興に向けて一歩一歩進んで行くことができるのは、たくさんの支援“税金”があるからこそであり、その存在は、特に人を助け、時に人を支える役目であると私は思う。

 日本が平和で経済大国であることの一つが国民がしっかり税金を納めているからこそであり、それらを大切に、本当に必要としている人々のために有意義に使うことが重要だと思う。

 店を出る時社長は、

「皆に、美味しいお寿司を食べてもらい、税金をしっかり納めていくことが恩返しだと思っている。」と笑顔で語ってくれた。

 私は今、税金により教育を受けている一人だが、将来「助け合って生きる社会」の一員として、税金を納め、社会に恩返しをしていきたい。