「最近のお父さんって、甘いものを食べるのを控えているみたいだね。」
「そうねえ、特定保健指導が役に立っているのかしら。」
先日の母との会話。私の父は、代の甘い物好きで、食事の後は必ずと言っていいほどお菓子を食べてきた。そして、年を重ねるごとに、お腹周りも徐々に大きくなってしまった。
確かに、仕事のストレスがあるのは分かるのだが糖分・脂肪分の摂りすぎは体に支障をきたしてしまいかねない。
そんな父に対して、埼玉県から特定保健指導を受けるようにと手紙が届いた。これまで聞いたことのない県からの指導に、父は不安になりながらもその詳細を読み始めた。生活改善を目指し、半年間、運動と食生活の指導を受けるようにとのこと。
父は、まさか自分がと、受け入れがたい表情をしていた。しかし、こうして埼玉県が自分の健康管理を支えてくれるなんてありがたいと、進んで保健指導を受け始めたのだ。
「甘いものを摂り過ぎたのはお父さん自身なのにどうして埼玉県が指導してくれるのかな。」
私の疑問に対して母は、
「実は、健康診断や保健指導などにも税金が使われているのよ。健康で安心した暮らしを送るための社会保障の事業だからね。」
と教えてくれた。
「じゃあ、お父さんは、税金を使って生活改善をするってことだね。責任重大だね。」
母は、これからの社会を背負う世代の方々が健康な体作りをおのおのが意識し、責任を持ってやるべき時代が迫っていると付け足した。
もはや、健康は個人ためのものだけではなくなってきているのだろうか特定保健指導が制度で整えられてきたことに何か意味があるのかと思い始めた。私は改めて社会保障や税の使い道について興味を抱いた。
調べてみると、少子高齢化社会の問題がそこにはあった。高齢者の急増に伴う医療や介護等の社会保障費の増大。そして、将来の働き手となるこどもの出生率の減少。二〇四〇年には、六十五歳以上を支える二〇~六十四歳までの人口が一.四人となることに驚いた。
これからは、もっと多くの人達が健康で働き続けていく必要性が高まるはず。だから、今から、税金を充ててまで健康指導を進めているのだとわかった。
「病気になってから治すことより、病気になりにくい体を作ることが大切なんだ。」
父のこの言葉は、まさしく特定保健指導の意義と成果だと思う。これからの日本を担い、高齢者の方々を支えるには、健康な体が不可欠である。父が言う意識改革こそが私たちに必要であり、伝えていかなければならない。これまでの日本を築き上げ私たちを守り続けた方々。その方々に恩返しするためにも元気に働き続け、支え続けることのできる担い手になれるよう努めていきたい。