医療費助成のありがたさ

 四冊の「お薬手帳」を僕は持っている。これらには、僕が生まれてからの十四年と七カ月の間、いつ、どこの病院にかかり、どんな薬が処方されたのかが全て記録してある。つまり、僕が税金の恩恵を受けた証拠である。

 新型インフルエンザが猛威をふるった平成二十一年、小学一年生だった僕は日本赤十字病院に緊急入院した。喘息が持病の僕は新型インフルにかかり、あっという間に肺炎へと悪化してしまった。四十度を超える発熱が続き、血中酸素濃度は下がり、ぐったりと横になったまま起き上がる力さえ無かった。すぐに酸素マスクを付けられ、点滴等の治療を受け続けた。懸命な治療のお陰で、レントゲンの肺の白い影がなくなり、僕は退院できた。しかし、その後も随分長い期間、通院を続けた。

 現在、僕はソフトテニス部に入り、体育も、持久走大会も参加している。僕が今、元気に活動できるのは、医師、看護師、薬剤師等多くの人に懸命な治療と看護を尽くしてもらったからに他ならない。しかし、もう一つ忘れてはいけない事がある。それは税金の存在だ。

 入院治療にかかる医療費は高額になる。それだけでなく通院治療にも診療費、薬代と毎回の医療費は大きな額となる。病院窓口でもらう診療費明細書を見ると、再診料、特定疾患療養管理料、処方せん料、長期投薬加算料の合計された額には驚かされる。現在も喘息のために定期的に受診している僕の診療費明細書を見る度に、母は「本当に助かるよね。」と言い、明細書をお薬手帳にはさんでいる。

 僕が住んでいる館林市には、子供医療費助成制度がある。中学三年生の三月三十一日まで、入院、通院ともに医療費を負担してくれる制度である。つまり、中学校を卒業するまで無料で病院にかかることができ、薬を処方してもらえるという制度だ。このありがたい制度の財源こそが税金である。僕が今、健康で安心して生活できるのは、税金の支えがあってのことだ。

 どんな時にも、どんな生活環境であっても平等に医療が受けられること、これは貴重な税金の恩恵である。僕達が受ける様々な税金の恩恵は当たり前と感じる程、日常生活を送る上で欠かせないものになっている。しかし、これらは当たり前ではない。そのことを正確に理解すれば、納税に対する「義務」という意識は「税金の恩恵を受けるため」という意識へと変わるだろう。なぜなら、税金の恩恵を受けていない国民はいないのだから。

 今、日本では少子化が深刻となり、急速に高齢化が進むという問題が起きている。この問題を自分とは関係ないと受け止めることは無責任だと考える。僕達は税金について、その役割、恩恵を知り理解していかなければならない。そして、問題と向きあう必要があると僕は思う。次世代の人達の健康や安全な生活を守るために、その努力を始めることが、僕達の責任を果たす第一歩となるのである。