命をつなぐ税

 以前、二千十五年十月に予定されていた消費税率十パーセントへの引き上げが十七年四月へと延期されたニュースを見て、母がホッとした顔をしていたことを思い出した。確か、消費税が八パーセントへと引き上げられた時も母は大騒ぎだった。自分へのごほうびだと言って、いつも買う大好きなチョコレートを、迷って買うのをやめていた。消費税分の節約、と母は笑った。

 買い物から帰る途中、母と税金についてずっと話した。消費税なんてなくなればいいのにと言う私に、母は消費税が上がると物の値段が高くなるから実際のところは厳しいけど、税金が集まらなくなった方が、もっと生活が大変になるんだよと教えてくれた。それから我が家は一度、税金によって大きな恩恵を受けていると話してくれた。

 私の妹は極低出生体重児で、生まれてすぐに新生児科のNICUという部屋に運ばれていった。体の発達が未熟で、一時は命の危険もあり、本当に大変だったという。私は生まれた妹に写真でしか会うことができず、幼いながらに寂しい思いをしたことを覚えている。妹の入院費、検査費、治療費はおどろくほど高額で、養育医療の補助がなければ、支払うことがとても困難だったそうだ。母は妹の心配をしているときに入院費などのお金の心配をしなくてよかったことは何よりもありがたかったと言っていた。

 毎日、病院へ往復する車の中で母は自然と涙を流していたという。自分が病院を離れている間に妹の体調が急に悪くなったらどうしようといつも不安でいっぱいだったそうだ。そんな気持ちを支えてくれたのが妹の担当の先生と看護師さんだった。妹に優しく接し、母にはげましの言葉をかけてくれた看護師さん。私は、そんな医療の現場を支えているのも税金であることを知った。税金のおかげで、妹が高度な治療を受けられ、今まで元気に育ったことは本当に幸せだと感じた。

 今、日本は少子高齢化社会だ。これから、いろいろな社会保障制度を充実させるために私達が大人になるにつれて、もっとたくさんの税金を支払うことになるだろう。つまり、私達はただ税金を払うのではなく、納税についてきちんと理解し、正しい税のあり方を学んでいかなければならないのではないだろうか。そして、「税はなくてよい」という考え方ではなく、「税と共に暮らしていく」という考え方をみんながもてるような国に変わっていってほしいと思う。私は税金をきちんと支払うことで、今度は自分が困っている誰かを支えられるようになりたい。また、これからは、人々の生活を支える税に感謝して生活していきたいと思った。